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-ボダボダボダ…-
口からは大量の血を吐き、鼻は微妙な角度に曲がり、まぶたの上はパックリ裂かれ血を流し、足をガタガタとふるわせながらも福沢はゆっくりと龍臥に向かって歩き出した。
…が、2~3歩進んだところで、ついに膝から崩れ落ち、凍てつくコンクリートへとその身を沈めた。
『うおぉぉぉぉぉぉっ!!』
龍臥は、足をもつれさせながらも最後の力を振り絞って立ち上がると、両の拳を高らかに突き上げ、天を仰ぐかのように暗がりの天井を見上げ、倉庫が崩れんばかりの雄叫びを上げた。
ついに猛獣福沢を討ち下した。
自分達の頭である涼と福沢が打ち負かされた両チームの兵隊達は、悪夢を見るがの如し硬直化している。
『ハァ…ハァ…、つ…次は…オドレの番や…。来いや白いの』
勝利と気合いの雄叫びを発し、自分の士気を上げた龍臥はゆっくりと白装束の男へと視線を移す。
白装束の男は、他人の喧嘩にはあまり興味がないのか、倉庫隅の壁にもたれかかったまま右手に持つ携帯を食い入るような眼差しで見つめていた。
その携帯を持つ右手が、突然プルプルと震え出し、白装束の男の顔色がみるみる怒りモードになった、…かと思うと今度は悲しそうな顔色に変化した。
『ど、どないしたんや白いの…』
白装束の男の様子を見て、ただ事では無い予感がした龍臥はお人好しなのか、戦闘モードから心配モードへと変わっていた。
震える右手で携帯を握り締めながら、白装束の男はゆっくりと顔を上げた。
目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
混乱と動揺が爆発したのか、ついに白装束の男は口を開き、断末魔のような雄叫びを張り上げた。
『お…おた…お宝が奪われてるぅーっ!!』
白装束の男の雄叫びにかぶさるような形で龍臥も叫んだ。
『モバゲーやんけーーーーーーーっ!!!!』
周囲で見ている両チームの兵隊の内、数名がズッコケた。
福沢とのタイマンの疲れが多少やわらいだ龍臥は、白装束の男を指差した。
『この状況で携帯ゲームとは…ナメられたもんやのぉ。お前…いったいなにもんやねん』
龍臥の問い掛けに対し、頭をボリボリと掻き出した白装束の男は、突然笑顔になった。
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