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『ぐっ…。テ…テメェ…。わかってるんだろうなぁ。俺ぁブルーバードだぞコノヤロー…』
仁王立ちで見下ろしながら龍臥は不気味に微笑んだ。
『んなもんワレのチャラチャラした格好見よったらさすがの俺も読者も予想はつくっちゅーねん』
『ど…読者…?なに言ってんだテメェ…』
ハトが豆鉄砲喰らったかのような顔をしながら手すりに掴まり立ち上がろうとした瞬間、龍臥のヒザが男の顔面を突き上げ、再びすっ飛んだ。
『こっちの話やから気にすなや♪』
男に意味不明な一言を吹き掛けるとウメの方を見てガッツポーズをとって見せた。
それに合わせてウメも丸めた新聞紙を投げ捨てて満面の笑みを作ると両手でピースをしたのだった。
ダダダダダダッ!!
突然の音に龍臥が振り返ると、スーツの男が一目散に逃げ出していた。
口からも鼻からもボダボダと血を流しつつも全力で走る後ろ姿を龍臥は見えなくなるまで見つめていた。
(ったく…。成り行きとは言え初日からめんどくせぇもんのシッポを踏んじまったみたいやでクソ…)
舌打ちをし、めんどくさそうに頭を掻きながら部屋に戻ろうとした時、「ガチャッ…」と鍵の開く音と共に203号室の扉がゆっくりと開いた。
ギ…ギギギギギッ…
少し開いた扉の中からヒョッコリと顔を出したのは、茶髪に染め上げた長めのウェーブヘアをしたハタチくらいの女性だった。
扉の隙間から顔だけ出した女は、龍臥を見ると軽く頭を下げた。
『あ…あの。追っ払ってくれてありがとうございました』
『あ、ども。ご近所さんやし、俺も迷惑してたもんやから…全然気にしなくてえぇよ』
予想外の女の大人っぽい顔立ちにどぎまぎしながら龍臥は言うと、部屋に入ろうとドアノブに手を掛けた。
『あっ。ちょっと待って…』
茶髪の女は慌てた様子で突然外に出て来た。
靴も履かずに裸足のまま出て来た女性は純白のシルク生地のネグリジェ姿で、中に身に付けている黒の下着が目視出来るほどくっきりと透けていた。
そんな姿を直視出来ずに目のやりどころに戸惑っていた龍臥をよそに、ネグリジェの女は言葉を続けた。
『突然ごめんなさい。あの…、まだちょっと恐くて。もし迷惑じゃなかったら少しだけウチんちに上がっていってくれませんか…』
思わぬ突然の言葉に龍臥は耳を疑った。
『え。あ…いや』
『嫌…ですよね。いきなり変なこと言ってごめんなさい』
瞬時にして女の表情が暗くなる。
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