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「ちょっと待って。」
俺は部屋を出たら、いきなり呼び止められた。その声は心地よいトーンで、母性を感じる。
振り向くと、髪を腰のあたりまで伸ばした少女がいた。
「誰…ですか?」
と呼び止めてきた少女に向かって、問いかけた。見た感じ俺よりは少し年上だな。
「いいから、来なさい。」
とその少女が言うとスタスタと歩いていった。ついて来いって意味かな?
そう思い顔に疑問符を浮かべるが、そんなことお構いなしで歩いていく少女を追うために、重たいトランクを持ってついて行った。
それにしてもきれいな髪だ。あいつを思い出してしまう……
あいつとは、俺の幼なじみの事である。
俺が守れなかったやつだ。まだ十数年しか生きていないが、生涯で最も後悔している事だ。
「私は、No.Ⅴ。さっきの会議で最後まで座っていた者よ。今から貴方の中に眠る力を引き出してあげる。」
と小会議室に着いたら、彼女は振り返り言った。No.Vと名乗った少女の髪の匂いが鼻腔に入ってくる。いい匂いだ。
因みに扉を抜けてすぐの所で振り返ったため少々ギリギリだ。
「俺に眠る力?俺はもう覚醒してるんだ……一つ以上は覚醒しないんじゃ――、」
「いいえ。貴方は特別な運命の下に生まれてきたの。そのため貴方は一つ以上、それどころかそれ以上覚醒するの。」
言葉を遮りNo.Vは言った。これが全ての理なのよ、と言わんがばかりに。
「特別…」
No.Ⅴは手を俺の額に翳した。何をする気だ?
「まぁ、せいぜい良い夢を…」
突然目の前が真っ暗になった。
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