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「せめてナイフか何かにしてくれたら…」
マリアはぶつぶつと文句を呟きひたすら歩いた。
しばらく歩くと、人の声が聞こえ始めた。
歓喜でも驚愕でもない、悲鳴の声だった。
瓦礫の山は、少しずつ形がはっきりしだして、どこが通りかぐらいは分かる様になってきたが、それは閑散から悲惨に変わっただけだった。
窓の無い家からはごうごうと炎が吹き出し、道端には、元は人だった黒い塊がごろごろと転がり、玄関からは全身を火に包まれた人が、踊る様に飛び出して来た。
驚き絶句するマリアの足に、無精髭を生やした男がしがみついて泣き叫んだ。
「俺の内臓が無いんだ。
お願いだ、一緒に探してくれ!」
彼の腹は真っ黒な穴が開いていて、そこからどす黒い大腸が、糸の様に伸びていた。
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