序章〉〉〉兆し

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今ていう世の中に幸せを感じるかと聞かれれば答えは“いいえ”だ。俺には今の世の中は灰色の景色にしか見えない。 「…うっ…あのヤブ医者めェ!!全然効かねぇじゃねえかよ…!!」 公園のベンチで頭を抱えて両手で力一杯に抑え込む。地面には鎮痛剤の錠剤が入った小瓶が転がる。 「ぐっあ…あぁ…くっそぉ!…ったれがァ!!」 怒りの感情に任せて声を上げた。途端にこめかみ部分をドリルで穴を空けられるような痛みが走る。 苦痛から逃れたい一身で頭を振り乱す。あまりの痛みにその場に両膝をついてアスファルトに頭を押し付ける。 くそ…!くそ!くそ!! 悪態をつきながらがりがり、がりがりと何かをすり潰すかのように歯ぎしりをする。 二ヶ月前に訪れた病院の診断では、原因はストレスから来る頭痛と判断されていた。出された薬を服用しても容態は一行に改善されることなく、寧ろ症状は日増しに悪化していった。遂には勤めていた会社を三日前に退社する羽目になっていた。 ここ一週間は特に酷い頭痛に加えて深夜には幻聴が聞こえるようになっていた。 名前を呼べ。忘れてた名を… 地の底から聞こえてくる。嫌な威圧のある声。 布団から起き上がると消えなくなる。 本当に嫌な気分しか残らない。
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