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「…ずっと、こうしたかったです。」
仄かな明かりに照らされた彼が、
愛おしそうにあたしを見下ろして言う。
一ヶ月ぶりに感じる彼の体温と、優しい声。
あたしの頬に触れる大きな手も
シャンプーの香りのする柔らかい髪も
…体を通して伝わる、少しだけ早く打つ鼓動も
触れたくてしかたがなかった彼のすべてが
ふわふわした夢のようで、今にも消えてしまいそうな不安と
こうして今、
一緒にいるという嬉しさに
込み上げる涙を見せないように、
あたしは彼の背中に腕をまわした。
この夜が終わらなければいいと
…本気で
そう思った。
「会いたかった…。」
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