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暗室になってる部屋は狭くて、人が一人入るのがやっと。
さらに、現像の仕方を知らないあたしは、先生に任せるしかなくて、現像が終わるのを座って大人しく待っていた。
10分ちょっとで先生が暗室から出てきた。
そしてまたあたしの隣に座ると、現像したての写真を一枚ずつゆっくりと見始めた。
「ん~、なかなか良いんだけどなんか物足りない…かな~」
「……………」
「お?」
一枚の写真のところで先生の手が止まった。
「人物撮るの珍しいね」
「えっ?」
そう言われて、あたしは先生の手の中の写真を覗きこんだ。
「あ、これはちがっ…」
それは、今日の朝。
あの屋上で撮った写真。
そう、北村勇二の寝顔だ。
「ふ~ん、北村ね。なに、お前北村のこと…」
「違います!!」
「別に隠さなくても、俺言わないし…」
「そーゆーんじゃなくて、たまたま寝てるの見つけて、しかもなんか周りの風景綺麗だし、北村くん被写体としてすごく魅力的でつい…」
「確かに、こいつ綺麗な顔してるよな。…これ、すげぇいいと思う。」
「え…」
「これにしねぇ?」
「冗談ですよね?」
「いや、マジだよ。北村の写真ならすげぇ人気出そうだし」
「でも…」
それは、隠し撮りだからなぁ。
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