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何でこいつは、こんなにも俺の中に入ってくるのか。
きっかけなんて分かんねえ。
小4の時、俺の親父が倒れた。
末期癌だった。
ガキだった俺には、癌がどんな病気だなんて分からなくて、末期と言われても治るものだと信じていたんだ。
だから、学校帰りに毎日病院に行っては、意識のない親父にいろいろ話かけたりして。
母さんも確かに毎日病院に行っていた。
でも、いつしか母さんは病院に来なくなった。
そんな母さんに、俺は言ったんだ。
「お母さんは何で病院に来なくなったの?」
その言葉に、母さんはただ一言
「…ごめんね。」
と呟いた。
近所の人は、介護疲れだとかなんとか噂をしていたけど、病院に来なくなればなるほど母さんはやつれていったんだ。
母さんがひさびさに病院に来たのは、親父が逝った日だった。
それから、通夜と葬儀を終えた母さんが、また俺にあの言葉を呟いた。
「…勇二、ごめんね。」
その時は、何に対して謝ってるか分からなかった。
けど―
次の日、学校から帰ると俺の家は空っぽだった。
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