secret9.

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何でこいつは、こんなにも俺の中に入ってくるのか。 きっかけなんて分かんねえ。 小4の時、俺の親父が倒れた。 末期癌だった。 ガキだった俺には、癌がどんな病気だなんて分からなくて、末期と言われても治るものだと信じていたんだ。 だから、学校帰りに毎日病院に行っては、意識のない親父にいろいろ話かけたりして。 母さんも確かに毎日病院に行っていた。 でも、いつしか母さんは病院に来なくなった。 そんな母さんに、俺は言ったんだ。 「お母さんは何で病院に来なくなったの?」 その言葉に、母さんはただ一言 「…ごめんね。」 と呟いた。 近所の人は、介護疲れだとかなんとか噂をしていたけど、病院に来なくなればなるほど母さんはやつれていったんだ。 母さんがひさびさに病院に来たのは、親父が逝った日だった。 それから、通夜と葬儀を終えた母さんが、また俺にあの言葉を呟いた。 「…勇二、ごめんね。」 その時は、何に対して謝ってるか分からなかった。 けど― 次の日、学校から帰ると俺の家は空っぽだった。  
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