secret9.

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テーブルもソファーも、テレビも冷蔵庫も、何にもなくなっていて 床に1枚の手紙。 『勇二へ こんな形であなたを置いて行ってごめんなさい。 お母さんは、もうあなたと一緒にはいられない。 お母さんは、村上拓也さんって人と遠くに行くことにしました。 あなたの荷物は、お母さんの姉のところに送ったわ。 大輔くんと仲良く、元気で暮らしてください。 本当にごめんなさい。 お母さんより。』 「…なんで?」 誰もいない… 何もない部屋でポツリと呟く。 「…い…やだ。」 俺は手紙をギュッと握りしめ、家を飛び出した。 「いやだいやだいやだ!!お母さん!!」 靴も履かないで、走り出した俺は 母さんが前に働いていたスーパーや、よく一緒に行った公園を走り回った。 「お母さん!!お母さん!!」 泣きじゃくりながら、必死に母さんを呼んで。 だけど、もう母さんはどこにもいなくて。 ランドセルを持ったまま、靴も履かずに真っ黒になった足。 地べたに座り込み泣き叫ぶ俺を迎えに来たのは、叔母さんと大輔だった。 『…勇二、ごめんね。』 俺が母さんと交わした最後の言葉は、その一言だった。  
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