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テーブルもソファーも、テレビも冷蔵庫も、何にもなくなっていて
床に1枚の手紙。
『勇二へ
こんな形であなたを置いて行ってごめんなさい。
お母さんは、もうあなたと一緒にはいられない。
お母さんは、村上拓也さんって人と遠くに行くことにしました。
あなたの荷物は、お母さんの姉のところに送ったわ。
大輔くんと仲良く、元気で暮らしてください。
本当にごめんなさい。
お母さんより。』
「…なんで?」
誰もいない…
何もない部屋でポツリと呟く。
「…い…やだ。」
俺は手紙をギュッと握りしめ、家を飛び出した。
「いやだいやだいやだ!!お母さん!!」
靴も履かないで、走り出した俺は
母さんが前に働いていたスーパーや、よく一緒に行った公園を走り回った。
「お母さん!!お母さん!!」
泣きじゃくりながら、必死に母さんを呼んで。
だけど、もう母さんはどこにもいなくて。
ランドセルを持ったまま、靴も履かずに真っ黒になった足。
地べたに座り込み泣き叫ぶ俺を迎えに来たのは、叔母さんと大輔だった。
『…勇二、ごめんね。』
俺が母さんと交わした最後の言葉は、その一言だった。
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