secret9.

5/23
前へ
/283ページ
次へ
大輔に懐いていた俺にとって、この家にいる限り大輔の言うことが絶対だった。 中学に入ってバスケを始めたのも、カメラに興味を持って写真を撮り始めたのも、全部が大輔の影響。 そこに『俺』って言う、個性が一つもなくて。 だから、学校の女子によく言われた。 『北村くんって格好いいけど、自分を持ってなくてつまんないよね。』 その言葉に最初は、俺の何を知ってるんだって思ったけど、その通りだと実感した。 それは多分、小学校から一緒にいる淳平の何気ない一言で。 『北村って、いつも大輔さんと一緒にいるよな。』 休みの日に遊びに行くのも、買い物に行くのも、いつだって大輔と一緒だった。 大学生の大輔が、中学生の俺に付き合ってくれてたのは、同情? そりゃそうだろ? 大輔には大輔の友達がいるのに。 父親に死なれて、母親に捨てられた俺に同情してるんだ。 そんな自分が嫌だった。 大輔の重荷な自分が嫌だった。 だから、俺はこの家を出ようって決めたんだ。  
/283ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加