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大輔に懐いていた俺にとって、この家にいる限り大輔の言うことが絶対だった。
中学に入ってバスケを始めたのも、カメラに興味を持って写真を撮り始めたのも、全部が大輔の影響。
そこに『俺』って言う、個性が一つもなくて。
だから、学校の女子によく言われた。
『北村くんって格好いいけど、自分を持ってなくてつまんないよね。』
その言葉に最初は、俺の何を知ってるんだって思ったけど、その通りだと実感した。
それは多分、小学校から一緒にいる淳平の何気ない一言で。
『北村って、いつも大輔さんと一緒にいるよな。』
休みの日に遊びに行くのも、買い物に行くのも、いつだって大輔と一緒だった。
大学生の大輔が、中学生の俺に付き合ってくれてたのは、同情?
そりゃそうだろ?
大輔には大輔の友達がいるのに。
父親に死なれて、母親に捨てられた俺に同情してるんだ。
そんな自分が嫌だった。
大輔の重荷な自分が嫌だった。
だから、俺はこの家を出ようって決めたんだ。
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