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真面目な話をするのは苦手だ。
特にこの3人とは。
母親に捨てられた俺を、当たり前のように受け入れてくれて、俺を家族だと言ってくれる3人に対して、俺はちゃんと向き合って来なかったから。
「…一緒にいるの、辛いんだ。」
やっとのことで出せた言葉に、涙が零れそうになる。
「…つらい?」
その言葉に、大輔の顔が歪むのが分かった。
「…俺は、母さんが憎い。
何も言わずに、俺の前から居なくなった母さんが憎いんだ。」
「…その気持ちは、分かってる。」
「…だから、辛いんだよ。
母さんに似てる伯母さんと伯母さんにそっくりな由貴さん。
2人と一緒にいるのが辛い。
母さんにそっくりな伯母さんに、甘やかされて、世話になってる自分が嫌なんだよ。
だから、この家を出たいんだ。」
ポロっと涙を流したのは、俺じゃなくて伯母さんと由貴さんだった。
「高校は、特待生制度のあるところに行く。授業料が免除になれば、家賃と生活費だけ稼げば生活していけるし。
この家に、迷惑はかけない。だから…」
一方後ろに下がって床に膝をついた俺は、3人に深々とお辞儀をして言った。
「お願いします。」
俺が初めてやった、土下座だ。
「やめて!!」
そんな俺を見て、駆け寄って来た伯母さんが俺の腕を引っ張った。
「分かったからやめて!!
母親に似てるあたしを嫌ったっていい。
そんなに辛いなら、無理しなくていいのよ。
だから…土下座なんて…」
涙を流しながら言う伯母さんの言葉は、少しずつ小さくなっていった。
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