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それからの俺は、本格的に勉強を始めた。
特待生になるためには、何としても首席を目指さなきゃならない。
「最近、勉強ばっかだな。」
休みの日に家に来た淳平が、俺の部屋で雑誌を読みながら呟いた。
「あぁ。」
そう言えば、淳平にまだ言ってないんだよな。
一人暮らしのことと、受験のこと。
「なんで?まだ俺ら中2だし、受験勉強にしては早いよな?
しかも、塾も通い始めたって?」
「…実はさ俺、高校入ったら一人暮らしすることに決めたんだ。」
「はっ?」
驚いた淳平の手から、バサッと雑誌が落ちた。
バスケ関連の雑誌が落ちて、広がったページにはマイケルジョーダンがデカデカと載っていた。
「…なんでまた?」
淳平の質問に、持っていたシャーペンを置いた俺は、腕を伸ばして「ん~」と目一杯伸びをする。
「俺さぁ、この家にいるの結構窮屈なんだよね。
俺を残していなくなった母親のこと、恨んでるくせにさ、母親にそっくりの伯母さんに世話になってんのとか。
すっげぇ嫌だし、いつか見放されんじゃねぇかって。
伯母さん自身は、そんなこと有り得ないって言ってくれるけど、実際母親に見捨てられた俺にとって、女が怖い。」
「…なにそれ。女性恐怖症?」
「ん~、そこまでではないけど。まぁ、親父が死んで、あっさり他の男に乗り換えた母親のこと思うと、恋愛とか糞くらえって思うけど。」
「はは、それじゃお前恋愛できねーじゃん。」
「まぁ、したいとも思わないけど。」
そう言って俺は、手持ち無沙汰で目の前のシャーペンをノートの上でコロコロと転がした。
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