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「明日香おはよッ」
「あ、ちーちゃんおはよ」
カメラを抱えたまま自分の教室に駆け込んだ。
その姿を真っ先に見つけて声を掛けてきたのは、中学からの友達の村山千花(ムラヤマチカ)通称ちーちゃんだった。
「部室行ってたの?ギリギリだったね」
あたしが自分の席に座ると、同時にチャイムが鳴り響いた。
「うん。展覧会に出す写真がなかなか撮れなくて」
「そっかぁ。もうすぐだもんね、展覧会」
「う、うん…」
「そういえば明日香、今日北村勇二見た?」
「えっ??」
その名前を聞いてドキッとしてしまう。
「今日見てないんだよね~。遅刻かな?目の保養なのにぃ」
ちーちゃんは、他校に彼氏がいる。
中学の同級生だった人で、高校が別々になってからあんまり上手くいってないらしくて、北村勇二を目の保養にしてるッて言ってた。
「北村勇二…」
屋上にいたよ。と言おうとして口を閉じた。
立ち入り禁止の屋上。
そんなとこに北村勇二がいたことは、言ってはいけない気がしたから。
だから、なんとなく言いたくなかった。
「明日香は興味ないもんね」
「え、」
「明日香が興味あるのは~」
ガラッと教室のドアが開いて、担任の先生が入って来た。
「愛しのだいちゃんだけだもんね」
ちーちゃんがコソッと耳元で言った。
あたしの顔は真っ赤になって、慌てて顔を俯かせた。
教室に入って来た担任、柏木先生に見られないように。
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