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「いやぁ、お手柄だったねぇ。松浦君が負傷したけど、二人とも見事だよ。」
夜が明けて署に戻ると、課長はご機嫌だった。
今回は完全に刑事課の手柄で、署長からお褒めを言葉をいただいたそうだ。
しかし、松浦を負傷させたのは相田の判断ミスのはずなのに、それが一切出てこない。
部屋を出て相田が向かったの、松浦がいつもいる屋上だった。
屋上のドアを開けると、松浦は目の前のベンチに寝ころんでいた。ドアが閉まる音を見ると、松浦は銃弾が打ち抜いた左肩を押さえて起きあがった。
「松浦、お前課長に今回の件をどう伝えた?」
「ぇ?どうって、そのまま伝えたけど?」
松浦の言うそのままというのは、きっと負傷は自分のせいだということだろう。しかし、今から相田自身が真実を話したところできっと耳には入らないだろう。
相田はため息をつき近くの壁により掛かった。
「その…今回の件、ご苦労だった。その…なにか、お礼をしたいんだが…。」
「お礼…ねぇ。」
松浦は少し考えると、立ち上がって相田に近づいてきた。
イヤな予感がして、相田は壁にべったりと背中を付いた。
「お礼…、これでいいや。」
頬に手を当てられ、松浦は触れるだけのキスをした。
瞬間、相田は頭のてっぺんから足先まで一気に電流が走るようなしびれを感じた。
そのまま松浦に見つめられ、相田は一気に顔を赤くして正気を取り戻した。
「こ、この馬鹿!!何やらかしてんだ!こんなお礼あってたまるか!俺のファーストキス返せ!」
「またまた照れちゃって。どうだった?初めてのキスはレモン味か?」
「苦いタバコ味だ!このっ、変態ダメ部下ぁ!!」
相田が本気で嘆いていると、本日の仕事の開始ベルが鳴り響く。
生まれて初めてのキス。
その相手は最悪な松浦だったが、タバコに混ざって甘いイチゴ・オ・レの味がした。![image=409797291.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/409797291.jpg?width=800&format=jpg)
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