彼の企み、俺の策略。

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 それにしても楓の顔も気持ち悪いが、やってる俺も我ながら相当気持ち悪い。そんな気持ちを露ほども出さずに、楓に向かって微笑んで見せる。これでも役者の端くれだ。演技にはそれなりに自信がある。    しばらく楓の様子を窺っていたが、まだ腐った世界から帰ってきそうにないので、俺は用事を済ませに行くことにした。   「ごめん。呼び出されてるから、もう行く」    俺は名残惜しいと言わんばかりの声を残して教室を後にした。教室を出た瞬間に自分で自分に鳥肌が立った。いけない、慣れなければ……慣れたくないけど。    生徒会室に行くと、会長と副会長が俺を待っていた。副会長は俺が来たのを確認すると、すぐに奥の扉の向こうに姿を消した。   「悪いな。渡す物があるのを忘れていた」    会長のそのセリフを待っていたかのようなタイミングで再び姿を現した副会長の手には、先程まで持ってなかった大きな紙袋があった。   「中身を確認してくださいね」    そう言われて中を見ると、紙袋の中には透明なビニールの袋で包まれた白い学ランと、小さな箱が一つ。俺は小さな箱を手に取って開けると、制服を買ったときに付いてきた鈍い金色の合金製のものとは違う銀色の校章が入っていた。
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