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酒と肴を置かれ、戸惑う博雅とゆるゆると酒を飲み始める晴明。
読経は今も宣耀殿で続いている。
弘徽殿の女御は、朝間、機嫌は良くしていたが……。
(私の体からなぜか香とは違う匂いがする。)
と、気にはならない程度の変化だが弘徽殿の女御はすぐに気付いた。
この夜は、あの美公達はやって来なかった。
「あの若造風情に心を許すのではなかった。」
と、弘徽殿の女御は激怒していた。
その頃、千夜はうっすらと笑みをたたえていた。
(あの姫宮が呪を唱えて生き霊を払えるとは…面白い。)
(しばらく、生き霊だけにしますか…弘徽殿の女御も流石に気づいたか。)
闇夜に溶けているような姿をしているが……。
白い顔は見れば、女人は一度で心を奪われる程の美貌の千夜。
愛良宮の鮮やかな呪の姿を見た……。
千夜は、愛良宮と一線を引かなければならぬ事は気づいていたが……。
それすらも、既に出来るはずもなく千夜は、愛良宮に対しての激しい執着を抱えて、一人、闇夜に佇む。
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