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「主上は宣耀殿に入り浸り、わたくしは悔しくて、悔しくて……たまらぬ。」
今まで溜め込んでいたものを吐き出す。
「では、私が手を貸しましょうか。
私は、千夜と呼ばれている者。
聞いた事があるはずですよ。私の手を握れば、契約成立です。」
と、御簾に女の手のような美しい手が入ってくる。
弘徽殿の女御は、考えもなしにその手を握った。
それは、自らの命を差し出した事とは思わずに……。
「私が宣耀殿の女御様の命を頂きますよ。」
と、言い立ち去る千夜。
弘徽殿の女御は、気分が明るい気持ちになった。
あの強力なあやかしの千夜を味方に付けたと言う喜びが先立ち……。
今後、起こる自らの愚かさには気づかない。
千夜は、一人で薄笑いをした。
弘徽殿の女御の命を頂く、絶好の機会を与えられたのだ。
(これは、私にとっても一隅の賭けか、凶と出るか、吉と出るか)
この時から宣耀殿の女御は、更なる生き地獄の日々を送り続ける。
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