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夜遅くの後宮に……。
ここは、弘徽殿の女御(こきんでんのにょうご)の住まいに、夜な夜な姿を見せる美公達がいる。
「今日も来て頂きましたの。」
と、御簾(みす。貴人と会う時に垂らしていた簾。)越しにゆっくりと弘徽殿は話しかけた。
「弘徽殿の女御様はさすがよいお香をお持ちのようで……。」
弘徽殿の女御は直衣姿の美公達の虚礼虚文を高笑いで吹き飛ばす。
「でも今は、主上(おかみ)のお心はあちらの宣耀殿の女御(せいようでんのにょうご=芙蓉の御方)に……。」
と、苦々しい口調で言う。
「しかし、宣耀殿の女御様は妊娠中の身では……。」
「その子は女子(おなご)が良いのう。」
と、言う有様。
だが……。
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