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弘徽殿は脇息に(きゅうそく。肘掛)もたれかかり、憎々しいげに言い放つ……。
「一掃の事、流産し芙蓉の御方(おんかた)も亡くなれば良いのに……。」
「なるほど……。
ですが、東宮に成れる男子でも産まれるかもしれませんが……。」
と、若く美しい顔立ちの公達は、うっとりする笑いの中に毒を含ませた。
「芙蓉の御方が男子を産まぬわけでもない。そうすれば東宮争いですな。」
「ええい、誠に憎らしい……。芙蓉の御方め。」
弘徽殿は嫉妬深く、望まれて後宮に入内し、一番に親王を産んだ御方。
人一倍、高慢な女御だと陰口を叩かれていた。
そして……。
ついに、芙蓉の御方に女子が産まれる。
のちに、見鬼の宮姫と呼ばれる事になる愛良宮(あいらのみや)の誕生だった。
そして、千夜は芙蓉の御方に取り付き、死ぬよりも恐ろしい生き地獄に引きずる事となる。
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