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千夜は、満月の夜に愛良宮の住まいに佇む。
人が見たら、魂を抜きとらる程の美貌を持つ公達姿で、愛良宮に近づく。
だが……。
愛良宮は、御簾の中からゆるりと話し出す。
「貴方が、千夜ですね。私に何の用ですか。今日は何かをするつもりなら、止めておくのです。今宵は安倍晴明殿もいますよ。」
「なるほど……。鬼も畏れる陰陽師をお連れとは、私をそれほどまでに払い出したいのですね。」
と、哀しげに言いつつ、愛良宮の前に端座(たんざ)する千夜。
「いや、何事かあってはと、心配性の主上(おかみ。帝の事)と東宮様の配慮ですから……。
気にせずともよろしい。」
と、恐ろしいあやかしの前だが、愛良宮は落ち着いたもの。
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