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「なるほど、今上の計らいですか。
しかし、私は危険を侵しても、貴女様にお会いしたかったですよ。」
ヒラリと扇を開き含み笑いをする千夜。
「なぜに、鬼やあやかしが見える見鬼だからですか。単に、珍しいので見ておきたいと思われたのですね。」
と、憮然とした表情の愛良宮。
「おや、意地の悪い言い方だな。貴女の強力な力にですよ。
雑魚どもに悩ませられていると聞き及び、私の気配を残してゆけば……悩みも薄まるのではと思いこうしてやって来たのに……姫宮はつれないですね。」
千夜はさらに含み笑いを強くする。
「私は気にしておらぬ……が、乳姉妹や乳母、母上も怖がっておるだけよ。
だが、一番に怖いのは人の心よ。」
と、きっぱりと言う愛良宮。
「なるほど…私よりも恐ろしいのは、人の心の中ですか。」
と、頷きながらも含み笑いを湛える千夜。
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