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Y県 F山の麓Aヶ原 陰鬱とした樹海の中に一軒の寺らしき建物が立てられていた。その寺は、言ってしまえば掘っ建て小屋のようで、一見すると人の生活しているような気配は感じることが出来なかった。 人の気配はおろか、その建物自体もいつ建てられたのかその外見からはでは判断のつけ様も無く、他の人から指摘されなけば気付くことの出来ないような風貌をしていた。 寺と言うよりも庵に近いそれの中には、入り口の丁度向かい側に、その建物からは想像できないような頑丈そうな木製の扉がついており、その扉の向こう側には、地下へと続く階段があった。 階段は石造りで出来ており、扉の向こう側とは違いきちんと掃除されていた。掃除されている事実が、ここへ来てようやく人の気配というものを感じさせてくれていた。 階段を囲む両隣の壁や天井は、岩盤をそのまま削りだしたようで、荒く削った様子が未だに残っていた。ここの住人の人柄を表しているのか、それともただ単に面倒くさいだけなのか、照明と呼べるものは天井からぶら下がった裸電球が寂しそうにいくつか間を空けてぶら下がっているだけだった。
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