『最強の男』

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『最強の男』

 “最強”とは何か?  少なくとも俺は、自らそう名乗った事は一度も無い。  ──強くなりたい、誰よりも……。  剣を手にした瞬間から、その一念だけで走り続けてきた。達人と呼ばれる者を捜しては挑み、勝利し続ける……ただ、それの繰り返し……。  斬って、斬って、斬り続けるだけの殺伐とした日々。──虚しい。  ようやくその事に気が付いた時、既に斬るべき相手など一人も居なかった。  “最強”とは何か?  答えが知りたいなら教えてやる。簡単な事だ。同じ相手と二度戦わなければいい。  挑むべき先駆者、向かってくる挑戦者、そして己以外の全ての人を斬り、数多の屍を積み重ねた山の頂に立つ者こそが“最強”なのだ。  その代償は──『孤独』だ。  
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