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『終焉』
──もう、終わりにしよう。
何度と無くそう考え、スイッチに手を伸ばしては踏み止まる。
希望と理想と野心だけで背負えるほど、このプレッシャーは軽くは無い。
そんな事は分かっているつもりでいた。だが、想像以上の重責に、私の精神はいつの間にか限界を超えてしまっていたのだ。
毎晩のように悪夢に魘(ウナ)され、毎朝泣きながら目を覚ます。かれこれ四年も、それを繰り返してきた。
自ら命を絶とうと考えた事も、一度や二度ではない。シャワーを浴びていて、気が付くと自分の手首に剃刀を当てていた事も……。
しかし、それも今日限りだ。
「大統領、お時間です」
「うむ……いま行く」
補佐官に声を掛けられ、私はゆっくりと席を立つ。名残惜しい気持ちも多少はあるが、この椅子に未練は無い。
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