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『隙間』
「……あっ?!」
自動販売機でジュースを買おうとした俺は、手を滑らせて小銭を落としてしまった。しかも運の悪い事に、百円玉が自販機の下に転がっていってしまう。
「クソ……ついてないな」
俺はぶつぶつとぼやきながら身を屈め、隙間に手を突っ込んで自販機の下を弄(マサグ)った。しかし、指先に当たるのは何だか分からないゴミクズばかり……。
通行人からは変な目で見られるし、このままじゃ埒(ラチ)が明かないと考えた俺は、思い切って地べたに這い蹲(ツクバ)り、隙間を覗き込んだ。
「百円、百円……」
と呟きながら視線をゆっくりと転がし、落とした百円玉の行方を探す。
刹那、俺はぎょっとして飛び上がった。
キラリと光った百円玉。その奥から、じっとこちらを見詰める何者かと目が合ったからだ……。
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