『石投げ』

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『石投げ』

 きっと明日は良い事がある。  子供の頃から僕はそう信じ、それを行ってきた。  何か嫌な事があると、近所を流れる川の畔まで赴いてやっていた遊び。水面をポーンポーンと滑る様に跳ね、いくつもの波紋が広がっては消えていく様を眺めていると、不思議と心が落ち着いた。  そして、こう思えてくるのだ。  悪い事ばかりは続かない。きっと明日は何か良い事がある筈だ──と……。  それが結局大人になっても抜け切れず、遂には習慣になってしまったという訳だ。 「ぼさっとするな、アハメット」  同志の声で僕は我に返る。 「見ろ、西側の資本主義者共が列を成してやって来るぞ。準備はいいか?」  僕は「勿論」と頷き、星条旗を掲げた車列目掛けて、不細工な手製爆弾を放り投げた。  明日は良い事がある。そう信じて……。  
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