『嘘つき』

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『嘘つき』

「お願い、嘘は吐(ツ)かないで」  彼女は懇願した。  しかし、彼はそんな彼女をせせら笑い、「ふん」と鼻を鳴らすと、 「嘘なんか吐いてないよ。ていうか、君はそんなに俺が信用出来ないの? そっちの方がよっぽどショックだね」 と逆に相手を責め立てた。 「大体さ、俺が浮気しているっていう証拠でもあるの?」  彼が間髪入れずにそう捲し立てると、彼女は答え難そうにモジモジと俯きながら、 「じゃあ……これ確認してみて」 と小箱を差し出した。  その箱を受け取り、「何、これ?」と中を覗き込んだ彼は、次の瞬間「ひっ?!」と小さな悲鳴を上げる。  中身は、切断された人間の左手首。その薬指には、彼が浮気相手に贈った指輪が填(ハ)められていた。  
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