『影』

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『影』

 水辺を歩きながら、ふと視線を下方へ落としてみると、水面に私の影が映っていた。  ある出来事が原因で、その後に悪い影響を与える事を『影を落とす』なんて言うけど、それは文字通り、水の中に影を落としてしまった様に見えた。 「落とし物は、ちゃんと拾わないとね」  そんな冗談を一人呟いて、その場を立ち去ろうとしたその時、何かに足首を掴まれる。  ぎょっとして再び視線を落としてみれば、タールのようなドス黒い流体状の物が、私の足に絡まる様にへばり付いていた。 「な、何これっ?!」  驚く私を嘲笑う様に、黒い流体はウネウネと薄気味悪く揺蕩(タユタ)う。 「落トシ物ハ、チャント拾ワナイトネ」  それの頭らしき部分が、ニタリと笑った。  次の瞬間、足の骨がギシギシと軋む程締め上げられ、私は物凄い力で水の中に引き摺り込まれた。  
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