25人が本棚に入れています
本棚に追加
父が怒った顔を見たことが無かった。
母や僕にいつも優しくて、
ずっと穏やかに微笑んでいたから。
それは大人になるまで続くものだと、
幼い僕は信じていた。
父が行方不明になるまでは。
平穏だった日々は、あっけなくて。
父の居なくなった日から、母の心からの笑顔を見ることもなくなる。
ーーー母の涙さえも。
きっと母は僕に心配をかけないようにしていたのだ。
そんな母も僕が高校を卒業した途端に倒れて、
帰らぬ人となる。
最初のコメントを投稿しよう!