641人が本棚に入れています
本棚に追加
汽車とは思えない広さだ。
そんなことを考えながら少女はリュウの後を追っている。
ブンタが残りの説明をリュウに任せたのだ。
窓はあるが外は何も見えない。
真っ暗。
リュウは白い扉の前で立ち止まり、振り向いた。
「ここが君の部屋だよ。さっきのロビーから5番目の部屋」
リュウが扉を開く。
「わぁ」
そこに広がっていたのは白を基調としたお洒落な部屋だった。
「洋服も旅に必要なものも全て揃っていると思うよ。足りないものがあったら言って」
「すごい。何でこんなに揃っているの?」
「自分探しの旅をサポートする列車は1つじゃないんだ。その列車を統率する場所がある。大体はそこから支給されるんだ」
「でも、至れり尽くせりすぎない?」
リュウは少し説明口調になる。
「記憶が無いってすごく不安定になるものなんだよ。だから、出来るだけ不自由させないように配慮しているんだ。君は全く動じてないようだけどね」
そして、リュウはわざと困ったような顔をした。
少女は思わずむっとする。
「こんなとこにいきなり放り込まれて大丈夫な訳ないでしょ!」
とは言わない。
何故って、ただの強がりである。
「だって、不安がったってしょうがないじゃない。泣けば記憶が戻るとでもいうの?」
リュウはすっかり感心してしまった。
さっきのブンタのように。
「君は賢いね。自分が置かれた状況を冷静に判断できる。僕もやり易いよ」
リュウは大きく息を吸い、「さーてと」と軽く弾んだ。
「僕の部屋は隣だよ。説明は僕の部屋でしよう」
少女は再びリュウに続いた。
最初のコメントを投稿しよう!