641人が本棚に入れています
本棚に追加
ドン!!
一方、少女の耳には確かに鈍い音が入っていた。
しかし、それはただの尻もちの音。
「いったーい!」
「だから駆け込み乗車はご遠慮くださいと言ったのに。大丈夫ですか?」
少女をのぞき込む男性。
逆光で少女からはその顔は見えない。だが、シルエットは相当でかい。
やっと目が慣れてきた少女は
声の主を見上げた。
そこにいたのはなかなかの体格をした大男。服に隠れて見えないが、相当筋肉質なようだ。
2mはあるだろうか、帽子を深くかぶっており、少女からはその表情は伺えない。
手をさしのべる男の手を振り払い尋ねる。
「誰? ココはどこなの? 私は……」
大男に遮られた。
「私はブンタと申します。このパッサート号の車掌をしております」
「パッサート号?」
少女はおおげさに顔をしかめる。
ブンタは少女の表情などは気にも止めず続けた。
「はい。パッサート号は“自分探しの旅”をサポートする列車です」
ブンタはぽかんとした少女をよそにさらに続ける。
「貴女が私たちがお世話する“旅人”ですね。随分可愛らしい方が来たものだ」
ブンタは少女に微笑んだ、ように感じた。(帽子で表情は見えない。)
少女は混乱しながらも懸命に思考を働かせようとする。
(えっ、……何この展開? 旅ってどういうこと? おかしいよ。だって私さっきまで……)
さっきまで?
最初のコメントを投稿しよう!