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「坊主。済まねェが、ひとっ走り番所へ行ッてくンねェ。北町の田嶋からッて言やァ、小者が何人か来ッからよ」
そうは云えど、只で動かないのは人の常。
まして、相手は年端も行かぬ子供だ。
更に死体を見た為か、ガタガタとと瘧の様に震えている。
「おいおい。ガタガタ震えてるじゃねえか、北番所の田嶋さんよ」
「おや、南番所の仁杉さン。そちらにも、小坊主が駆け込ンだンで?」
見れば仁杉の後ろに控える同心の背中へ、七歳くらいの男の子が怯えた様子で張り付いていた。
「しょうが無ェな……。寺の真ン前ェだし、庫裏か何か借りて検分しようぜ? 人目に晒すにゃ、忍びねェよ」
田嶋の提案を受け、北大路と志村が寺内へと入り込む。
恐らく、和尚と談判する気だろう。
「んで、北町の。お前えは、この別嬪。何が原因で死んだと踏む?」
「そうさなァ……。首にゃ、絞めた痕ァ見当たらねェ。かと言ッて、自害や事故でも無ェ。そして、女陰からの出血とくらァ。まず間違い無く、中条流の医者が堕胎ェに失敗ェしたンだろうな。この、おろくは」
事実、抜ける様に白く見える肌には血の気が無い。
そして、それこそが他から運ばれたと判断する材料となった。
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