久家 恭一

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『すまんが、用を足したい。その間、一人になるが構わないか?』 と言い出したのである。 しめた。これは願っても無い千載一遇のチャンス。限りなく0に等しい可能性が、大幅に成功に近付くのだ。 『ダメだ。司令の許可なく、持ち場を離れる事は許されない。職務放棄は極刑だ。』 『しかし…』 『この場で銃殺されたいか…?』 『わ、わかった。我慢する。』 皆本は、目の前で繰り広げられる滑稽な会話を聞き、再び奈落の底へと叩き落とされた気がした。千載一遇のチャンスは、任務に忠実な一兵士の手によって、再び遠ざかっていったのだ。
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