久家 恭一

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『くそっ!!』 皆本は、奴らに聞こえない程度の声で呟く。トイレの一つや二つくらい良いじゃ…そうだ、トイレだ!! 余りに切羽詰まっていたせいか、皆本は完全に見落としていた。何も出口はドアだけじゃ無い。窓も立派な出口だ。 通常の窓なら奴らの目を引くが、トイレの小窓なら警戒も薄いはず。今さらにして、自分の思考の固さを呪った。どうやら、秘書と言う立場に縛られ過ぎたせいか、柔軟な発想までが皆本から奪われてしまっていたようだ。 そうと決まれば、こんな所に用は無い。皆本は奴らに気付かれぬ様に、裏口近くにあるトイレへと急いだ。
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