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『言いたくないなら詮索しないが、京都まで出て来れないか?』
藤原は状況を察したのか、私の事について深く追求してこなかった。
『京都…ですか?』
京都。まだ若かった頃に、一度だけ仕事で訪れた事がある。殺伐とした東京とは違い、どこか日本人の心を癒す様な、不思議な感覚の街だった。
『別に構いませんが、急ぎですか?』
『あぁ。出来るだけ早い方が好ましい。』
『では明日の朝一番の列車で、そちらに向かいます。』
『京都に着いたら、また連絡をくれ。番号は…』
藤原は手短に連絡先の番号を伝えた後、「また京都で」と言って電話を切った。必要な事以外は話さない、藤原らしい電話だった。
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