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翌日の朝、私は京都駅にいた。しばらく来ない間に、京都の表玄関は大きく様変わりしていた。
正面にそびえ立つ京都タワーを見上げながら、一息いれようと懐からタバコを取り出した瞬間、
『ここは禁煙だ。』
背後からの突然の声に振り返ると、そこには苦笑した藤原がたっていた。
『藤原さん、お久しぶりです』
少し老けただろうか。最後に会った時の藤原と、目の前に立つ藤原を重ね合わせながら、再び藤原を見る。やはり目尻にしわが増え、額が少しばかり後退している。
『髪の毛が気になるか?』
藤原は自らの額を叩きながら、少し寂しそうに語りかけてきた。
『いえ、藤原さんも変わらずお元気そうで何よりです。背後に立たれた時も、全く気配を感じませんでしたよ。』
『相変わらずお前は、お世辞が下手くそだな。そんな事では、諜報活動なんか出来んぞ。』
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