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タクシーに乗り込んだ藤原と皆本が向かったのは、京都市内でも西部に位置する嵯峨・嵐山方面だった。
嵐山と言えば、観光名所として渡月橋や美空ひばり館などが有名で、ひと昔前の中高生の修学旅行では必ずと言って良いほど、団体行動範囲内に組み込まれていた場所だ。
しかし時代の波と共に、修学旅行は格安で行ける海外主体へと変わり、今では料亭などがいくつか軒を連ねるだけである。
『藤原さん。一体どこへ向かっているんですか?こんな辺鄙な場所に私を連れて来て、一体どうしようと言うんですか?まさか今更、観光地巡りなんて言わないでくださいよ。』
正直、少し苛立っていた。いくら元上司とは言え、わざわざ東京から呼び出した理由も言わずに連れ回され、ましてや京都の山奥まで連れて来られたのである。
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