木曽 共栄

3/6
前へ
/29ページ
次へ
『そんなにいきり立つな皆本。こんな山奥まで来たのには、ちゃんとした訳がある。それにもうすぐだ。』 『わかりました。』 『運転手さん、この辺りで結構ですから。』 タクシーが停まったのは、渡月橋の袂だった。 まだ朝方と言う事もあってか、周りには人気は余り無い。一体藤原は、こんな所で何をしようと言うのだ。 『皆本、ここから先はこれで移動する。すまんが、もうしばらく付き合ってくれ。』 そう言って藤原は、屋台船乗り場の方へ歩いていった。 ここに来て私はピンと来た。なぜこんな山奥で、しかも船に乗るのか。確証は無かったが、ある程度の予測はついた。 もし私の予想が外れていなければ、この後藤原は船乗り場にて名前を告げるはずである。 『朝早くからすいません。予約しておいた藤田ですが。』 『あぁ。お待ちしてました。お連れ様は、もう船の中でお待ちですよ。』
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加