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『こんな朝早くからすまないね。』
眼前に座した老人の朗々とした声が、皆本の耳に届いた。
優しげな物言いとは裏腹に、老人と言うには余りに似つかわしくない双眸。そして眉間に刻まれた皺の数が、男の人生を物語っていた。
『藤田さん。こちらの方は?』
隣に腰を落ち着けた藤原に対し、自分の推理の先を問い掛ける。
藤原がこの様な場所を指定した理由は、会話の内容を聞かれたくない、もしくは自分の正面にいる人物との接触を、公にしたくないに違いない。しかし前線を退いたとは言え、自分を呼び出すとなれば、眼前の人物は余程の大物なのであろうと推測出来た。
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