1,初恋

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    ――あれっ? しばらくして,どこにも痛みがないことに気づく。 「危ないところでしたね…。」 その時,間近で男性の声が聞こえてきた。 ゆっくりと目を開くと,なぜだか男の腕の中にいた。 どういうこと…!? 「このツタが足に絡まってしまったんですね」 男が話し続けるが,状況がまったく把握出来ていない私は頭の中がぐるぐると混乱するばかりだった。 「お怪我はありませんか?」 その時,男の息が私の耳元にかかってきた。 思わず体がビクッと反応する。 「ちょっちょっと離して!!」 慌てて男の胸をぐっと突き放した。 だが男は離そうとしなかった。 「ちょっと…!!離しなさいよ…!!」 私は必死に抵抗する。 「ちょっと待って下さいっ!!今離したら…」 「嫌ッ!!」 勢い良くバンっと男を突き放すと,自然と腕からすり抜ける。 やったぁ…! だがその途端,下半身に力が入らなくなりそのまま地面に座り込んでしまった。 「あ…れ……?」 頭の中が更に真っ白になる。 「あなたは地面に倒れそうになったせいで腰を抜かしてしまったようですね」 男はそう言って方膝をつけ私に手を差し伸べた。 「大丈夫ですか?」 その格好がなんだか主君を守る騎士のようなそんな感じがした。 ちょっと恥ずかしかったけど素直に彼の手に自分の手を重ねた。 どうせ暗くてお互いの顔は見えないはずなのに,恥ずかしさから男の顔を見ることができなかった。  
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