2,不審者とスーツ

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  「…あ!?」 男性は不機嫌そうにこちらを見上げた。 見た目は30代前半で少しやつれた顔に,顎にヒゲを生やした男だった。 「あのもしかしてあなた…この前私を助けてくれた人ですか?」 私は緊張しながらもは尋ねた。 すると男はニヤリと薄笑いしてこう言った。 「そうだよ」 その瞬間,嬉しさが込み上がってくる。 やっと…やっと会えた…!! 「わっ私,あなたにすごく会いたくていつもここを通るとあなたを探したんです」 一生懸命興奮を抑えたつもりだったが,表情と話し方でバレバレだった。 すると男はニッコリと笑って腰を上げた。 「そこで車待たせてるんだ。今からドライブでもしない?」 男は目の前の道路に止めてあった車を指差した。 私は笑顔で頷く。 だってまたせっかく会えたのに,これでさよならなんて寂しかったからだ。 だがふと思う。 なんかこの前と雰囲気が違うような… 私はもう一度男に尋ねてみた。 「あなた本当にあの時の人なんですか…!?」  
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