彼はいかにして彼を訪ねなくてはならなくなったのか

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「ここの経営がうまくいってないのは知ってるだろう。旅芸人なんてものは、だんだん廃れてきているからな。 この一座には長いこと世話になったから、引退する前にちょっと恩返しがしたいんだ」 「……それで?」 大男は怪訝な表情のまま、ちらりと初老の男の様子を伺う。 初老の男は穏やかな雰囲気のまま、人形を撫でながら微笑んだ。 「都合のいいことに、俺にはあてがある」 「あて? 何の?」 「金だよ、金。うまくいけばこの一座をしばらくの間食わせてやれるかもしれない」 初老の男の表情が急に引き締まる。大男も佇まいを正して相手に向き合った。 「いいか、よく聞いてくれ。時間がないんだ。 ……今回の興行が終わったら、俺は娘を探しに行く。もしかしたら、何ヵ月も、何年もかかるかもしれない。俺が戻るまで、団長やみんなを傍で支えてやっていてくれ」 言葉の意味を理解するのにしばらくかかった。 「娘? あんた娘いたのかよ!」 「ダージリン。どうなんだ?」 初老の男の真剣さに気圧されて、大男は戸惑ったように頭を掻いた。 「どういうことだよ? 旅芸人に金がないのは昔からだろう? ううん……とりあえず、娘に会えば金の無心ができるんだな? それに時間がないって──もしかして、借金の返済期限がせまってるとか?」 .
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