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大男は懐からクシャクシャになった封筒を取り出した。
彫像のような彼はちらりと視線を上げ、また一瞬だけ顔をしかめた。
デスクの横に控えていた、まだ十代半ばほどの少女が、そのクシャクシャの紙を受け取って主人へと渡そうとして──
「汚い」
──彫像は、完全に本から目を離すと、少女に差し出された封筒を指でつまんですぐに机に置いた。
「これが僕に宛てられた手紙だなんて信じられない。何をどうしたら、こんなにヨレヨレになるんだ」
かなり嫌そうに封筒を開き、中の手紙も極力指が触れないよう、つまんで広げている。
「リーさんからの手紙でなければ読まずに棄てているよ」
大男はため息を吐いて、年中寝癖だらけの頭を大きな手でがしがしと掻いた。
「仕方ねぇだろ。俺は旅暮らしだぜ? 時には荷物を枕に野宿もするんだ。まあ、破れたり折れちまったのは悪いと思ってるけどさ……」
「破いたのか」
彫像に睨まれ、大男は慌てて視線を反らし、苦笑いで「悪かった、悪かったよ」と繰り返した。
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