彼はあまり会いたくない知人を訪ねなければならなかった

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呆れたように息を吐いて、彫像は手紙に目を落とす。 することがなくなったのか、大男は部屋の調度品をじろじろと落ち着きなく観察しながら移動し始めた。 「リーが病気で、今は動けないんだ。それでお前にそれを届けるように言われた」 大男が部屋の中を歩きながら声をかけると、ふうん──と気のない相づちが返ってきた。 彼は手紙から目を離さずに、傍らにいる少女に何らかの合図をする。少女は軽く頷いて部屋を出ていった。 「それで、リーさんは今どこに?」 「マツヤマ医院」 「ああ、あそこか……」 今度は打って代わって丁寧に手紙を畳み、引出しから取り出した小箱に、端の破れた封筒と中身を大切そうに仕舞いこむ。 それから、同じ引出しから便箋を取り出すと、手早く手紙を書き始めた。 「転院させよう」 「なんだ、問題ありか?」 「マツヤマ医師は僕も知ってる。腕はいいよ。けど設備が不安だ」 そこへ先ほどの少女が戻ってくる。外出用のマントを羽織っているから、使いを頼まれたのだろう。 「ミカ、これを医療局のタカナシさんに渡して」 封をした手紙を渡すと、ミカと呼ばれた少女は小さく頷いた。 .
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