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「医療局!?」
壁にかけてある絵を外そうとしていた大男が、手を止めて振り返った。
「い、医療局って、あの医療局? 政府の機関の?」
「他にあるの?」
絵を元に戻すよう叱られて、しぶしぶ大男は額縁を壁にかけ直してからデスクに近づいた。
「顔が広いとは思ってたけど、お前いったい何者なんだよ」
「僕は僕だよ。──ミカ、帰りに何か好きなものを買っておいで」
封筒と一緒に金貨の数枚入った小袋を渡されて、少女がぱっと表情を明るくした。
「いいの?」
「うん。手紙を届けたら、しばらく街でゆっくりしておいで。僕にも甘いお菓子を買ってきてもらえるかい?」
少女は喜んで何度も頷くと、弾むような足取りで出かけていった。
「──あいつには甘いよなあ、お前」
「ミカは特別なんだ。それより……」
彫像はデスクに肘をついて大男を見上げた。
胸のあたりまで伸ばした長い髪がさらりと揺れる。
改めて見てみると、作り物めいた端正な容姿は、それが男性なのか女性なのかすら曖昧にさせる。
大男はひそかに彫像を観察してから、応接用のソファに許可もなしにどっかり腰を下ろした。
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