彼はあまり会いたくない知人を訪ねなければならなかった

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「話してよ。ここまでの経緯をさ」 長い足を組み、彫像のような彼は軽く小首を傾げる。 その動作ですら、どうしたら他者から最も美しく見られるのか、計算されて行われているように感じてしまう。 何となく人間味がないのだ。きれいすぎて。整いすぎて。 大男は息苦しそうにニ、三度首を回してから、 「書いてあるんじゃないの? その、手紙に」 やはり息苦しそうに服の首元を緩めた。 「手紙には、君を手助けしてやって欲しいとしか書かれていない。君の口から聞かせて」 「ああ、そう」 どこから話せばいいのか。 しばらく天井を見つめて、大男は何か思案しているようだった。やがて面倒そうに口を開き、 「そうだな──じゃあ、まあ、最初から話すか」 そしてふと思い付いたように、「ミカを使いにやったのは人払いのためか」と問うたが、 相手はそれこそ彫像のように静止して答えなかったので、大男はぽつりぽつりと話し始めるのだった。 .
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