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顔を上げたアルネが見ている先は私の後ろ。はて、何だろう。
後ろを振り向こうとすると、私の両脇からぬっと何かが出ているのが見えた。
「姫様! 申し訳ありません!」
「わひゃ!?」
それを確認した刹那、私の足は地面から離れた。両脇を何者かに抱えられ、身動きがとれなくなる。
いきなりのことに、私はすっかり混乱してしまった。足をバタバタさせて喚き散らす。
「ちょっ! 何!? 何なのよ! ほらアルネ! 出番よ出番!」
「わー。力持ちですね、騎士さん」
「片手で人持って振り回せるヤツが何言ってるのよ! 早く私を助け――騎士?」
アルネの言葉にはっとして、我に帰る。首を精一杯後ろに向けると、銀の鎧と兜を身につけた王国の騎士が見えた。
……そういえば、姫様とか言ってたわね。今冷静に考えると、その時点で王国関係の人物だと分かった筈。私も未熟である。
「未熟である――じゃなくて。
逃げる気はないから降ろしなさい」
大方、父さんの安全策だろう。アルネが私に話をし、私が逃げようとした場合の。
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