一章:記憶を失った英雄

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   ……が、予想が的中する形で、何も起きてほしくないという私の期待は裏切られることになった。   「なっ!?」    耳をつんざく爆音。続いて地面が揺れる。まったく準備も心構えもしていなかった私は、バランスを崩した。   「あだっ」    青い空が見える。と思ったのも束の間。頭に鈍い音と衝撃が響き、耳に聞こえてきたのは爆音の反響――いや、耳鳴り。そして、幾つも重なり合った悲鳴だ。    襲撃。テロ。真っ先に浮かんだ単語に、私は焦りを感じた。    早く状況を確認しないと。   「あっつつつ……。アルネ!」    痛む頭を押さえて立ち上がる。あれだけの揺れに関わらず、アルネは同じ場所に立ち続けていた。   「……ぁ。 姫様、何か」    ぼんやり空を見上げたりして。    いつもは完璧なメイドなのに……頭を打ったのだろうか。私は打ってもなんともなかったけど。   「『何か』じゃないわよ。あんたもあの大きい音聞いたでしょ?」   「音……あ、はい。 そうですね。音が……ひ、姫様大丈夫ですか!?」    かと思いきや急に血相を変えて私に駆け寄ってくる。正気に戻ったみたいだ。    その手を私は払いのけ、   「私は大丈夫。 ほら、それより行くわよ! なんか危ない気がするの」    演説台に向かって走り出す。アルネが危険だからと制止する声も聞かずに。  
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