一章:記憶を失った英雄

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    「――姫様。 朝ですよ。起きて下さい」    不意に声がかけられ、身体が揺らされる。    早朝。 世界の中心ルーズリア国のお城でも、起床している人は少ないであろうこの時間に、私の一日は始まる。   「あ……もうそんな時間?」    欠伸をもらしながら目を開くと、目の前には見慣れた顔があった。    私のメイド、アルネ・アルフィルナ。長く、柔らかそうな薄い茶色の髪。小柄でスタイルは女の子らしく、こちらも柔らかそう……。  年齢は私と同じ十五。同性の私から見ても、とても可愛らしい女の子だ。          私が目を覚ましたのを確認。フリルがあちこちに付いたメイド服を揺らしながら、彼女はいつものように頭を下げる。   「おはようございます。ルーフル姫様」   「ん、おはよう。いつもありがと」    つられて、私も頭を下げる。    これが、毎朝の恒例行事である。  
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