一章:記憶を失った英雄

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           私、ルーフル・ルーズリアは大陸一の大国、ルーズリア王国の姫だ。    不自由なく生きていると思われる私だけど、最近……いや、一年前からの悩みがある。      それは、記憶がないこと。    現在十五歳の私は一年前、全ての記憶を失った。    幸いなことに知識や常識は失っていない。だが、一年経った今でも私は『今の私』に違和感を感じている。    今の自分は自分ではない。そんな確信を、どこかで持っている。      ――そう。     「……自分でも時々イタイヤツだと思うわ」    それはわかっているつもり。      着替えと身支度を終え、私は王国の広場にいる。    理由は王様である、私の父さんの演説。国の英雄である私は、拒否権なしにその場に同席という話になったのだ。    広場には大勢の人が集まっており、その身分も様々。他人には興味なさそうな、成金貴族すら集まっている。    中には魔法を全てと考える過激派、魔法教の人達の姿も見える。彼らは黒いローブ姿なので分かりやすい。    魔法教……苦手なのよね。    まあ好き嫌いはともかく、様々な人間が集まっている。みんな演説を楽しみにしているのか、いくつものざわめきが重なり、喧騒を感じられる。簡単に言うと、うるさい。  
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